【施工記録】メルセデスベンツ W221 S65 AMG(V12ツインターボ)ECUチューニング|低回転域の応答性を作り込む|mbFAST Tuning

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自社のデモカーとして所有するメルセデス・ベンツ W221型 S65 AMGに、ECUチューニングを実施した記録です。6.0L V12ツインターボエンジンは純正で612馬力・1000Nmを発生しますが、車両重量が重く、定回転域から一気にフルスロットルへ踏み込んだ際にパワーゾーンが高回転寄りで反応がもたつきやすい個体としても知られています。今回はこの特性を踏まえ、単純な出力アップとは異なるアプローチでチューニングを進めました。自社所有の車両であるため、通常のお客様の車両では踏み込みにくい試行錯誤も含めて長期的に検証できる点が、この記録の特徴です。得られた知見は、同型のS65・S600系グレードをお預かりする際のセッティングにも活かしています。

mbFASTデモカーのメルセデスベンツW221 S65AMG

車両情報

車種メルセデス・ベンツ W221型 S65 AMG(6.0L V12ツインターボエンジン・自社デモカー)
作業内容ECUチューニング(低回転域特性の調整)
作業日2022年12月14日
施工店mbFAST Tuning

作業内容

特殊な構造のECU

S65AMGのECU内部(左右対称に2枚分のチップを搭載)

S65 AMGに搭載されるV12エンジンは、通常ECUを2基搭載する高性能・多気筒車が多いなか、1基のECUの中に2枚分のチップを内蔵する特殊な構造になっています。またOBD経由でのデータ書き込みに対応しておらず、書き換えのたびにECUを車両から取り外して基盤に直接アクセスする必要があります。

2枚のチップは同時に書き込めないため、片方ずつ電源を入れて順番に書き込む必要があり、通常の車両の倍近い作業時間がかかります。基盤への直接アクセスは慣れた手順とはいえ、毎回の脱着・書き込み・復旧という工程を丁寧に踏む必要があり、V12ならではの手間がかかる工程です。

診断で見えたエラーの切り分け

診断機で読み取ったエラー表示(TWCダメージとミスファイヤ)

作業の過程で複数回、点火系のミスファイヤを示すエラーが診断機に表示されました。プラグやイグニッションコイル、ボルテージコンバーター、O2センサー、燃料フィルターの劣化など、V12特有の故障で考えられる要因を一つずつ検討しました。

複数のプラグで同時にミスファイヤが発生していること、左右バンクを問わず発生していることなどから、劣化しやすい特定パーツの不具合というよりも、制御面の作り込みで対処できる領域と判断しました。DIYでの部品交換で対処する選択肢もありましたが、V12上品さを保つ観点から、あえてECU側のデータで解決する方向を選びました。

ブースト圧を上げずに反応を作り込む

S65AMGのECUチューニング作業の様子

一般的なブーストアップは分かりやすいパワーアップですが、S65のように車重のあるV12ツインターボでは、熱量の増加によるインタークーラーの冷却不足や、上品な乗り味の劣化につながりやすい面があります。今回はブースト圧を据え置いたまま、点火時期やトルクリミッターなどのマップを調整し、低回転域からのアクセル反応を改善する方向でセッティングしました。

W221世代の600・65AMG系グレードは5速ATを搭載しており、現行の多段ATと同じ感覚でパワーを引き上げるとミッションとの相性が悪化しやすいという事情もあります。ブースト圧やトルクリミッターを安易に引き上げるのではなく、V12本来の上品さを保ったまま反応性だけを底上げする方針で作業を進めました。

高速道路の合流や追い越しといった一瞬の加速だけであればブーストアップも有効ですが、連続した高速巡航でタービン温度が上昇すると、インタークーラーの容量不足から再加速時に息切れを感じる場面も出てきます。長期的に所有するデモカーだからこそ、そうした熱問題まで含めて総合的に判断した結果が今回のセッティングです。

作業のポイント

出力の絶対値を追うのではなく、車両ごとの性格に合わせてマップを作り込む点がECUチューニングの本質です。今回のS65 AMGでは、ブースト圧を上げるという単純な手段をあえて選ばず、点火時期・トルクリミッターの調整で低回転域の反応を底上げしました。診断機で確認したミスファイヤの切り分けも含め、パワー数値には表れない乗り味の作り込みを重視した施工です。自社のデモカーだからこそ長期的な視点で試行錯誤できる、社内検証も兼ねた一台です。今後シャシダイでの計測も予定しており、数値面での変化は改めて記録していく予定です。

よくあるご質問

Q. ブーストアップをしないECUチューニングにはどんな効果がありますか?

低回転域でのアクセル反応や、パワーが高回転まで途切れず続く感覚など、パワー数値には表れない乗り味の改善が期待できます。今回のS65 AMGも、ブースト圧を据え置いたまま点火時期やトルクリミッターの調整でレスポンスを底上げしました。

Q. OBD非対応のECUでも書き換えはできますか?

対応できます。S65 AMGのようにECUを車両から取り外して直接アクセスする必要がある車種にも施工実績があります。通常のOBD対応車種より作業時間はかかりますが、書き換え自体は問題なく可能です。

Q. エンジンチェックランプが点いた場合の原因切り分けもしてもらえますか?

対応します。プラグやイグニッションコイル、O2センサーなど考えられる要因を診断機の情報や発生パターンから絞り込み、部品交換とECU側の調整のどちらで対処すべきかを判断したうえでチューニングを進めます。

この施工の元になった記録は mbFAST Tuning 本店ブログの記事 でもご紹介しています。

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